麻酔科医の仕事は術前,術中,術後に分けられる.術後の痛み(青枠)を最小限にして全身管理を行うために,術前の全身状態を把握し,術中の麻酔方法を選択する.術中を導入・維持・覚醒の期間に分けて,鎮静・鎮痛・筋弛緩からなる9つの枠(赤枠)を埋めるように最良の麻酔方法を選択する。


1種類の薬で全身麻酔は行えず,鎮静は静脈麻酔薬,鎮痛は麻薬,筋弛緩は筋弛緩薬を導入から維持まで使用し,覚醒時に効果がなくなるように調節する。しかし麻薬など鎮痛薬の効果がなくなると術後に痛みが生じてしまう。


局所麻酔薬によるくも膜下麻酔は麻酔域の調節が難しい。適量であれば下半身だけの鎮痛と筋弛緩が得られるが,大量であれば呼吸が止まり,全くも膜下麻酔となる可能性がある。くも膜下麻酔だけで術中管理を行うと術後に痛みが生じてしまう。


局所麻酔薬によるくも膜下麻酔は麻酔域の調節が難しい。適量であれば下半身だけの鎮痛と筋弛緩が得られるが,少量であれば麻酔域が低すぎて術中管理ができない.そこで硬膜外腔にカテーテルを挿入して液体を追加注入すると,歯みがき粉が押し出されるように,くも膜下腔内に注入された局所麻酔薬が押し上げられ,麻酔域を高くできる.さらにカテーテルから局所麻酔薬を持続注入すると,術後の痛みもとれる。


神経線維は細い交感神経,中間の知覚神経,太い運動神経に分類できる。硬膜外カテーテルから注入する局所麻酔薬の濃度を,術中では高濃度にして鎮痛と筋弛緩を得て,術後では中濃度に変更して,運動神経には作用させずに鎮痛だけを得る。